L2とL3の違い
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L2とL3の違い
ネットワーク設計や障害対応において、L2とL3の違いを正確に理解することは非常に重要だ。特にインフラエンジニアやネットワーク運用に関わるエンジニアにとって、この基礎知識は日常業務で頻繁に使われる。
OSI参照モデルにおける位置づけ
OSI参照モデルは7層で構成されており、L2とL3はそれぞれ異なる役割を担っている。
- L1(物理層): ケーブル、光ファイバーなどの物理的な接続
- L2(データリンク層): 同一ネットワーク内でのデータ伝送
- L3(ネットワーク層): 異なるネットワーク間のルーティング
- L4(トランスポート層): TCP/UDPによる信頼性のある通信
- 以下省略
L2(データリンク層)の特徴
通信範囲
同一ネットワーク(LANセグメント)内のみでの通信が可能。物理的に同じスイッチに接続された機器同士が対象となる。
使用するアドレス
MACアドレス(Media Access Control Address)を使用する。48ビットの一意な識別子で、ネットワークカードに物理的に割り当てられている。
例:AA:BB:CC:DD:EE:FF
主な機能
- フレームの送受信
- エラー検出
- フロー制御
- スイッチングによる効率的なデータ転送
代表的な機器
- L2スイッチ(スイッチングハブ)
- ブリッジ
- 無線LANアクセスポイント
L3(ネットワーク層)の特徴
通信範囲
異なるネットワーク間での通信が可能。インターネット経由での通信もL3の機能だ。
使用するアドレス
IPアドレスを使用する。論理的なアドレスで、ネットワーク管理者が設定する。
IPv4例:192.168.1.100
IPv6例:2001:db8::1
主な機能
- ルーティング(最適な経路の選択)
- パケットの転送
- ネットワーク間の接続
- TTL(Time To Live)による無限ループの防止
代表的な機器
- ルーター
- L3スイッチ
- ファイアウォール
実際の通信フローでの違い
同一ネットワーク内の通信(L2)
PC-A(192.168.1.10) → PC-B(192.168.1.20)
- PC-AがPC-BのMACアドレスをARP(Address Resolution Protocol)で確認
- MACアドレスを使ってL2スイッチ経由で直接通信
- ルーターは経由しない
異なるネットワーク間の通信(L3)
PC-A(192.168.1.10) → Webサーバー(203.0.113.50)
- PC-Aがデフォルトゲートウェイ(ルーター)にパケットを送信
- ルーターがルーティングテーブルを参照して最適な経路を選択
- 複数のルーターを経由してWebサーバーに到達
L2とL3の比較表
項目 | L2(データリンク層) | L3(ネットワーク層) |
---|---|---|
通信範囲 | 同一ネットワーク内 | 異なるネットワーク間 |
使用アドレス | MACアドレス | IPアドレス |
主な機器 | L2スイッチ、ブリッジ | ルーター、L3スイッチ |
プロトコル | Ethernet、Wi-Fi | IP、ICMP |
経路制御 | なし | ルーティング |
実務での活用場面
ネットワーク設計時
- L2設計: VLAN設計、スイッチの選定
- L3設計: IPアドレス設計、ルーティング設計
障害対応時
- L2障害: スイッチポートの状態確認、MACアドレステーブルの確認
- L3障害: ルーティングテーブルの確認、pingによる疎通確認
セキュリティ設計時
- L2セキュリティ: ポートセキュリティ、MAC認証
- L3セキュリティ: ファイアウォール、ACL(Access Control List)
トラブルシューティングでの応用
L2レベルの確認コマンド
# MACアドレステーブルの確認
show mac address-table
# スイッチポートの状態確認
show interface status
L3レベルの確認コマンド
# ルーティングテーブルの確認
show ip route
# 疎通確認
ping 192.168.1.1
# 経路確認
traceroute 8.8.8.8
L2とL3の連携
実際のネットワークでは、L2とL3は連携して動作する。例えば、異なるネットワークにアクセスする際:
- L3: IPアドレスを元にルーティング決定
- L2: 次のホップ(ルーター)のMACアドレスを解決
- L3: パケットをルーターに転送
- ルーターで再度L3処理(ルーティング)を実行
この連携を理解することで、より深いネットワーク設計と障害対応が可能になる。
まとめ
L2とL3の違いは、通信範囲と使用するアドレス体系に集約される。L2は同一ネットワーク内での効率的な通信を、L3は異なるネットワーク間の接続を担っている。
実務では両方の知識が必要になることが多く、特にクラウド環境でのネットワーク設計では、この基礎理解が設計品質に直結する。